あるRTWPC達 第3話 BOTとの壮絶(すぎ)な戦い

「…ひまだなぁ〜」
緑の尻尾をくゆらせているひとつの人影があった。
「今ごろみんな遊んでるんだろうなぁ〜…
 ドライブの画像整理でもしようかなぁ〜…」
…かなり哀愁が漂っている。
そもそも、ここはカオスワードダンジョンなので人は居ない。
それも、「岩・ ・ 」という妙なワードを入力しているため誰かと会うことは皆無といってもいいのかもしれない。
こんなところで暇といっているほうがおかしいともいえるのだ。

何をやるでもなく、盗蟲の飛んでる中を座っている彼女は、シャハルの鏡を持つプレイヤー、チコラブ。
犬耳とワニのような尻尾、赤いペット用のぶかぶかの皮の首輪を身につけている。
何故彼女が一人でここに居るのかというと、…仲間がみんなログインしていないからだ。
昨日知り合ったAアルク嬢も今日は運悪くログインしていない。

「…BOT狩りでもしよか。」
彼女はそう思いたってカオスゲートへ。
「枝テロ起こってませんように。」
そう呟いてカオスゲートに入った。

──────────────────フェイヨン東フィールド
ここでは、「猫耳のヘアバンド」というレアアイテムを落とすモンスターが居る。
そこでは自動操縦でモンスターを狩りつづけるPCがわんさと居るのである。

「ピアッシンショッ!!」チコラブの銃が火を噴く。
モンスターとともに戦士のPCが崩れ落ちる。
通常、PCに攻撃を加えることはできない。
しかし、複数のモンスターを攻撃できる技ならば攻撃を加えることができるのである。
この攻撃もそうである。自分から対象までの直線上に居る敵を攻撃することができる。

「…猫耳出ない」尻尾がびたっ、びたっと地面にたたきつけられる。
…彼女の射程にモンスターが入ってきた。
「リニアスナイプショッ!!」モンスターの頭部を綺麗に貫いた。
瞬間、そのモンスターが居たところをナイフが空振った。
「…?」疑問に思っていると、…いきなり黒い物体が!!
「わたっ!!」なんとかかわし、「もうっ!!リニアスナイプショッ!!」
…手ごたえが無かった。もしやと思い、チコラブはその場を離れた。
木が引き裂かれる音がして轟音を立てて倒れる。
(…あれは、デモンズランス?まさか…)


時間は数分前。
あるプレイヤーがフェイヨン東でログインしていた。
「…さて」骨をかぶった剣士の男である。
彼の名は黒月緋純。「異端の探求者」という有名PCである。

彼は戦士のPCの獲物を横取りしている。
「ボッツにやるものは何も無いのさ…。」
そういう言葉を残してモンスターを倒しつづける。

そして、彼はまたモンスターを見つけ、倒そうとしていた。
「もらったっ!!」言葉と同時に、短刀で切り付けようとする。
風船が割れるような音をたててモンスターの頭部が弾け飛んだ。
「…(怒」偶然、彼は機嫌が悪かった。
そのため、BOTだと思い込んで銃弾の放たれた方向にデモンズランスを放ったのだ。
そして反撃の銃弾を難なくかわすと、もう一発デモンズランスを放つ。
手ごたえが無かった。

「…一体何が起こっているんだ?」大きな白い翼を持つPCが居た。
「無事に通り抜けられるか?」そのPCは森のほうに歩き出した。

その頃、森の中では激しい攻防が続いていた。
(くそっ、しぶといBOTだ!!)黒月は青ポーションとオーラポーションを
大量に持ってきていて、今はそれぞれ4分の1を消費したところである。
(魔法ばっかりで、何でこんなにもつんだよ!?)チコラブは銃を使っているため
攻撃できなくなる、ということは弾丸の装填のし忘れ、ということだけだ。
ちなみにチコラブは、シャハルの鏡を装備する隙が無いため装備を変える事ができない。
よって今は相手が精根尽き果てるのを待つしかなかった。
「メロー・ファ!!メロー・ファ!!」水がたたきつけられる音が辺りに響いた。
人が二人倒れる音が辺りに響いた。

「ん…」
「大丈夫か?」そこには白髪のPCが居た。
「あ…バルさん…?」チコラブは薄目をあけながら答えた。
「く…」隣で男の声がした。見慣れない顔だが、声には聞き覚えがあった。
「おまえ達は、何をやっているんだ!!」
いきなり怒号が響く。辺りのモンスターも、その勢いには耐えられなかったようだ。
「うぁ…」「うぉ…」二人の声が重なる。
「おまえ達は一体何をしたんだ!!森がこんなになるまで一体何を!!」
声のしたほうに顔を向けると、銀髪の男性PCが居た。
「「ゲ・・・ゲームマスターっ!!?」」二人の声がまた重なる。
彼は、このゲームの管理者のうちの一人だ。
「…僕達が、一体何を?」チコラブが、恐る恐る聞いた。
「あのな…おまえは自分のやったことも覚えてないのか…?」
「あ、確かいきなり魔法を放たれたからカッとなって…」
「おまえはどうなんだ!?黒月!!」
「…目の前でモンスターが撃たれて、それをBOTの放ったものだと思って」
黒月と呼ばれたPCが答える。
「…あの、まさかあれ放ったの貴方ですか?」黒月と呼ばれたPCのほうを向きながら聞く。
「え?じゃああの弾丸って、君が?」黒月と呼ばれたPCが答える。
「はぁ…。偶然射程内に入ったから撃っただけですけど…?」
「なるほど、それでこんなことになったわけだな…(怒
 おまえら、覚悟はできてるだろうな?黒月、チコラブ」
「…黒さんどこか居るんですか?」素っ頓狂な声で聞いた。
「…俺だよ?黒月」見慣れない男PCが答える。
「や、だって黒さんなんか仮面かぶってるでしょ?」
「仮面はこっちだ」白髪のPCが言う。確かに、黒月の仮面らしきものが地面の上においてあった。
「…じゃあ、貴方が黒さん?」表情がこわばったまま、聞く。
「ああ。ってか、それよりも…」黒月らしきPCは恐々とゲームマスターのほうを向く。
「…(怒」

その後、どんな処分が下ったかは当事者しか知らない…