あるRTWPC達 第20話 8人(-2)の悪魔

「それで?君は一体どうしたいのさ?」「俺か?まぁ適当にやるよ」
「適当?ずいぶんと身勝手だね」「悪かったな、畜生」
「でもそれが最重要かもね」「どっちかにしろっての」
「まあ、僕たちは君を守るためにいるから、ね。ご主人様」
「それやめろ。マジ恥ずかしいんだから」「じゃあ、チコラブ様?」
「様は余計だっての。…で、訊き忘れていたがおまえは一体何なんだ?ヒュドール…だっけ?」
「だから僕たちは君を守る存在だって」「じゃあお前姿見せろや」
「君は自分の武具をどう思う?」「相棒だよ、使用期間にかかわらずな」
「なら僕は君の相棒だよ。それ以外に無いからね」
「なるほどね、分かった」「流石に牌を捨てすぎて和了っちゃったようだね」
「大体、何かおかしいとは思ったが、こういうことかよ…」
「ま、ね。それと…そのうちに僕の創造主が来るはずなんだ」
「ああそう。正直俺に関係する人が増えて困るよ…」
「大丈夫だよ、なんとかなるから」「無理」
「…即答しないでくれない?ものすごく自信無くすんだよね…
 ほら、落ち込まないでさ、…僕の方が落ち込みたいんだって…」

─異常事態が、発生していた。
「現在、ログアウトの出来ない状況となっております。
 ユーザーの皆様にはご迷惑をおかけしますが、…」
『だと。お前もそうなのか?』例によって例の場所。
「や、ここは影響が出てないみたい。ログアウト普通にできるよ?
 …ただ、プロンテラなどの通常フィールドやカオスワードダンジョンに移動出来ないだけで」
『影響が出ているじゃないか…』
「そう。間違ってる、影響、ある」「確かに。チコラブ様、しっかりしてくださいな」
「…だが、ログアウトは出来る」「そ。ぼくはRTWから締め出し喰らったわけさ…」
チコラブは4人…レーニャにメイド、マフラー男に翼の生えた少女と話をしている。
「…締め出しじゃないんですよ、チコラブさん」女性がいきなり現われた。
「ああ、君は…順当に行けばヘイムダルかなぁ?それで、彼らの目的は?」
チコラブは真後ろに現われた女性に目もくれず暢気に尋ねる。
「恐怖を集めること。ある『兵器』を覚醒させるための…」
「…兵器?嘘つく、よくない」「…まあ、信用してもらえないのも無理は無いですね」
「…僕は信じるよ。それで、彼らを阻止するにはどうしたらいい?」
「そちらの女の子」「ニフリート、なるほど、私、能力?」
「それで何処に行けば良いんだい?」

──暗黒都市シンジュク
「くそっ、やっぱりダメか…!?」「一旦引くしかないな…」
「ふん、全く…お前達では準備運動にもならんな」
メディウムの目の前にはレツヤ、黒月緋純と数人の一般PCたち。
黒月達の数による攻撃にメディウムはびくともせず、黒月達に不利な状況。
不意に、違和感がその場の全員を襲う。
「皆、伏せろっ!」黒月が言い放った瞬間
「ストレイヤー…ヴォイド!」「!?」いきなり紅色の風が吹き荒ぶ。
「なっ…チコラブさん…2丁拳銃じゃなかったのか?」見れば、チコラブは…
「何か問題でも?レツヤさん」大量の武器を持ってきていた。
「くっ…はははっ、滑稽だな…その姿?そのようなもので、私を倒せると?」
「さてね。けども…今日はイレギュラーの大掃除大会なんだよ」
「俺も、参加させてもらおうか」黒い風が吹く。
刃と刃が交錯し、メディウムの顔に傷が付く。
「…ち、油断しすぎたか。良いだろう、私の全力を持って貴様らを葬ってくれる!『時間停止』!」
「『タイムストッパー』…『ジョイントビート』!」「何っ!?」
凍った世界に突入してまもなく、メディウムの右手首を槍が貫いた。
「くそっ…『白銀の死屍人形』!!」様々な武器が浮かび、チコラブへと放たれる。
「おや、余裕がなくなったんだねぇ…『スパイダーウェブ』!」「ぐっ!?」
蜘蛛の巣にメディウムが引っかかる。そしてチコラブは悠々と近づき…
「チャージ…『エクスプロージョン』!」強烈な波動が放たれ、世界が動き出す。
「『十七分割』」「…え?」黒月が後ろからメディウムを切り裂く。
「ふえっ…」気付いたときには、すでにメディウムは消え去っていた。
「…黒さん、こないだのヘイムダルは良いとしておくんだけども…とどめもってったね」
「さあ?何のことだか」「…まあ良いや。次行こうか」
「…って、ちょ、チコラブさん…あの女は一体何なんだ?こないだといい…連中に何か恨みでも買ったのか?」
「あれに関しては…なんか敵の親玉が僕たちを恐れてるみたいなんだよね、『フェイヨンの三奇人』を…
 それと、黒さん、自分が使うアイテム用意して。これから…『祭り』だから、さ」
「ああ、大丈夫だよ、…それにしても、面倒だなぁ」
「愚痴らない。僕も同じなんだから…。それに、僕達じゃないと出来ないそうだしさ…」
そして、二人はカオスゲートへと足を向ける…

──山岳都市フェイヨン
「「『水龍神掌』!!」」「ガグッ…!!」アトラスの巨体が後ずさる。
流石に二人分の水龍神掌を受け止めることは出来なかったようで、隙ができる。
「「もらった!!」」「『三龍旋』!!」「『阿修羅覇凰拳』!!」
続けざまに高威力の技を叩きつける。アトラスの巨体が跳んだ──
「おおおおぉぉぉ!!」と思いきや巨体がバラバラに寸断されていく。
「ああ、ヒスミンじゃないか」「おや、黒月さん。いつもどおりのキレですねぇ」
もう定番の十七分割。この技だけで、誰が来たのかがすぐに分かる。
「…もう、黒さんはとどめだけ掻っ攫うの好きだねぇ…」
「それよりもさぁ、この騒動をさっさと治めてBOT狩り行こうよ、ヒスミンにチコラブくん?」
「…イデモンさん、緊張感全く無いですね」ナイラが苦笑いで言う。
「さて、チコラブさん…何かお手伝いできることはありませんか?」
「…そうだね、どうせ4人になったんだし…手分けして行こう。
 あと行くべき場所は…プロンテラ、モロク、ゲフェン、ピュアスノーの4箇所」
「…モロクに行くか」「では私はプロンテラへ」「チコラブくん、悪いけどゲフェンに行かせてもらうよ」
「…OK、皆、頼んだよ」チコラブはそういうと、カオスゲートへと入って行く。
チコラブがカオスゲートを抜け、他の3人も次々とカオスゲートを通っていく。

──奇跡の町ピュアスノー
「…来ましたか、チコラブさん」ベンチに、プロメテウスが座っている。
「プロメテウス…久しぶりだねぇ。あの時のおもてなしは大変良かったよ」
「そうですか、それは光栄ですね」飄々とした笑顔でプロメテウスが答える。
「それで、お礼としては拙いんだけれども…僕のおもてなしを受けてくれるかい?」
「何を言ってるんです?おもてなしとは招待した側がするもの。あなたは自分から此処に着たんですよ?
 …不可能ですね」プロメテウスの目の光が変わる。…殺気が噴出してくる。
「…全く、僕だけがもてなされるわけか。困ったものだねぇ…」
「『メテオストーム』!!」プロメテウスの言葉により、隕石が次々と落ちてくる。
「『エモーション・トーレント』!!」チコラブは何処からとも無く氷塊を取り出し…上空へ投げた!
「む、無茶苦茶なっ!」「隙めっけ!『グラヴィティ・ビュレット』!!」
チコラブの銃から重力球が発射される。「ぐ…うううああ!!?」
「まだまだ!『ルイネーション』!『チャージバスター』!!」
「しまっ…」続けざまに銃弾に当たる。
「『スピアブーメラン』!『シールドブーメラン』!『トマホーク』!
 ええと後…もういい、もう全部適当になげるっ!」
「こ…こんな負け方なんて…嫌だ…」「嫌じゃなくて、さっさと落ちろー!」
…結果、様々な店売り武器を消費(一部盾あり)して、プロメテウスは消滅した。

──瓦礫の街
「…まだ、位置、特定、出来ない?」「すまない、ニフリート…ちょいとプロテクトが厄介でな」
「早く終わらせて、チコラブ様の援護へと向かわないと…!」
レーニャを除く4人が必死にパソコンと向き合い、キーボードを叩いている。
「…やはり、ウイルスコアが必要ですか?」「違うな、別の方法で…よし、第7ロック解除!」
「後、2つですか…!」「ジェイド、休んで…此処から、ジェイド、サポート、出来ない…」
「…畏まりました」メイドがパソコンの前から離れ、月夜花の少女に近づく。
『…全く、私はあいつのために何も出来ないのか?』
「いえ、居る事こそが最大の勤め、かと思われます。
 チコラブ様はああ見えてそれ以上にレーニャ様を大切に思っていますからね」
『無事なら良いんだがな…』「今は、信じましょう。レーニャ様…」
ジェイドがレーニャに茶の入った湯飲みを手渡したと同時にマフラーをした男の声。
「よし…第8ロック解除!」

──王国首都プロンテラ
「ち…何でてめえなんだよ。お呼びじゃあねぇぜ」
「いえ、こちらとしても貴方たちはお呼びでは無い。早々にご退場願いましょうか」
「ほざけ!手前なんかに俺が倒せると思うな!
 …我が名と死の力をもってして我に従いし者よ…出でよ!」
メルクリウスの目の前に召喚陣が現われ、禍禍しい姿の騎士が現れる。
「…ロードオブデス…まさか、此処でそんなものを出してくるとは…」
召喚された騎士の攻撃をかわしながら呟く。
「『猛虎爆進拳』…『爆砕鉄拳』…『三龍旋』…『水龍神掌』!!」強烈な連撃が召喚された騎士に直撃する。
そして…「『シグナムクルシス』!!」「『トマホーク』!!」「『ハイジャンプ』!!」
カオスゲートからの援護攻撃。放ったのは…
「…ダリアさん、リフィールちゃん、アンクくん…」
「大変な事になってますね」「どんな敵でも私が吹っ飛ばすっ!!」
「リ…リフィールちゃん…落ち着いて…」戦場なのに暢気なものである。
「さて…では」「うん。其処の子供!」「ガキにガキとは言われたかねぇな…ファラオ!」
魔法陣が形成された…「『トマホーク』!」と同時に斧が魔法陣の線に突き刺さる。
「…あ?」「ビンゴォッ!いまだよ、皆!」
あっけに取られる一同、リフィールだけがさも楽しそうに握りこぶしを作る。
「え…あ…とりあえず『グラビティスタブ』!」「…うおっ!?」
アンクの繰り出した技がメルクリウスを掠める。
「くそっ、冗談じゃねぇ…アークエンジェリング!」「其処だっ、『爆砕鉄拳』!」
魔法陣が現われたところに拳を叩き込むナイラ。「ちぃっ!!」
「神よ…邪悪なる言霊を封じ込めよ…『レックスディヴィーナ』!!」
「うぐっ!?」「『炎帝覇王断』!吹っ飛べぇっ!!」
「がっ…!!」直撃。メルクリウスが飛ぶ方向へ即座にナイラが回り込む
「『水龍神掌』!!」「竜をも貫く渾身のっ…『ドラグーンスマッシュ』!!」
ナイラが叩いた直後、アンクも接近して槍の一撃を放つ。「げほっ…」
メルクリウスが、槍に貫かれる。アンクが槍を抜くと、メルクリウスは地に倒れ伏した。
「…くはっ、畜生…まさか…手前か…断罪…」
その言葉を残し、メルクリウスは散った。

「…ダメですわ、ヘイムダルは裏切りましたし、ミーティアやブレイクさえも応答がありませんもの」 「やはりやられたか。だが、此処までは予定調和…つまり、奴らは」 「言うまでも無いわ、イグニート。それよりも貴方は殺戮貴を、ルナは狩人を…判ってるわね」 「大丈夫ですわ、ヴォイド。そういう貴方は曲者の銃王を担当するのではなくて?」 「ルナ…ヴォイドにそういうことを訊いたって愚問だぞ」 「…彼女は油断出来ないわ、幾ら私でも少々不安よ」 ──凶星が、輝いている。時間とともに、僅かながら光を増して──