あるRTWPC達 第12話 偽勇者再び・女は強いMIX

「今日こそ年貢の…」「やかましい。ポリンに溺れとけ」
犬耳の少女が、その容姿に合わない台詞を発した後に赤いマントの男が軟体生物に埋まる。
そして、数秒後。男は光となって消え去った。

ご存知、RTWの中の一幕。
犬耳の少女──チコラブ──が、赤いマントの男──ユウ・シャー──に付きまとわれているのだ。
事の発端は…『あるRTWPC達−9−』を参照のこと。

「…ったく。あいつの目にはレベル上げとかねぇのかよ」チコラブが愚痴る。
「さて…何処行くかねぇ」頭を抱えるチコラブ。そこに…
「!誰だ!!」後ろから迫ってくる存在に対して威嚇射撃。
…戦士系PC。彼の視線の先には…ムジナ。もしやと思いチコラブは彼の目の前で手を振ってみた。
(…反応無し。BOT、か)普通は目を瞬くものだ。
そして、戦士系PCが動き出し、ムジナと一直線になったところで…
「ピアッシンショッ!!」チコラブの銃が火を吹いた。
戦士系PCは光となって消滅。ムジナのいたところには…猫耳。
「…なんか運がいいなぁ。LUCKそんなにないのにさ…」拾いながら呟く。
「…さて。そろそろ来る、か…。面倒くさいなぁ。羽も切らしたまま買うの忘れてるし(汗」
そして出てくるユウ・シャー。「いい加減観念しろ!!貴様を倒して、この俺様が…」
ガボォ。「よっこら、しょ」ユウ・シャーは状況がわからない。
ユウ・シャーがうろたえているうちにチコラブはユウ・シャーを埋め終えた。
「…これで暫くは持つだろ」そう呟いてチコラブはフェイヨンに歩いていく。

「…さて。これでいいや。…ていうか、何で僕はわざわざあんな阿呆の相手をしているんだろうか…」
と、道具屋を出たところで「ねえ、チコラブさん?」というように声を掛けられた。
「はい、何か用ですか?」振り向くと…両手斧『出会いは神の御業』を背負った…幼女。
(…幼女も指定できるネットゲーって、無いだろ?普通…)内心、呆然。しかし見た目には出さない。
「あの、メンバーアドレス交換してくれません?」幼女が言う。
「あ…や―、僕、既にPT組んでるんですけど…いいですか?」「はい♪」
「それじゃあ、名前は?」「リフィールっていいマス♪」「へぇ〜」
傍目には、可愛い女の子二人組み。そこに…
「リフィールッ、離れろ!」ユウ・シャーの声。
「…あ、れ?リフィール。こんな馬鹿と知り合い?」チコラブがリフィールに聞いた。
「一応、兄です。…私よりもてんでダメダメですが」リフィールがふつうに答える。
「そいつは、この俺様を埋めたんだ!!正義の鉄槌を下さねばならん!!」
「…埋めた?」「うん。面倒だったから落とし穴はめて埋めたよ」さらりとした受け答え。
「だァー!!聞いているのか!!この俺様の話を!!」聞いているからこそ出来る話では有るのだが。
「ごめんなさい、あんな兄で…」「お兄さんは選べないからねぇ…仕方ないよ」リフィールに哀れみの目を向ける。
「くそ!チコラブ、貴様、俺様の妹まで洗脳するか!!」何か焦っているユウ・シャー。
「「あんたが異常なだけ」」さらりと酷いことを言う二人。
「…そうか、ならば…チコラブ!!貴様を葬って、わが妹の呪縛を説いてくれるわぁ!!」雷鳴刀で斬りかかる。
しかし…「『炎帝覇王断』!!」直撃した。ユウ・シャーは、訳の分からない悲鳴をあげながら、4つほど向うのフィールドに飛ばされた。
「…うわ。むごぉ」「ATK偏重タイプですから。更に妖狐c3枚」「…ということは、威力が…3780、ですか(汗」

「そういえば、レベルは?」「75♪」嬉しそうに答える。
「…75!?黒さんと同レベル!?」「…黒さん?」「あ、黒月緋純っていうPC」
「ああ、そうなんだ。チコラブさんは?」「65。最近レベル上げサボってばっかだし、ね」
「パーティーメンバーの人たちがいるんでしょう?」「や…僕のほうが手伝っている、っていう感じだし」
「チコラブ!!貴様ぁ!!」話をしている二人の後ろからユウ・シャーが出てくる。と同時に…
「いい加減学習しろ」ミニオンストライクのポリンを掴んだチコラブがアッパーを当てる。
「さぁ〜、いい当たりがきそうです!!リフィール、打ったー!!」見事にホームラン、な勢いである。

──ドゥナ・ロリヤック──
「ええ、チコラブさんは『僕を頼って良いよ』と言ってましたけど」
「いや〜、でも…やっぱり余り助けてもらうと迷惑じゃない?」
「それは大丈夫でしょう…おや?」格闘家の男が何かに気付く。
「…?どうか、したん…」槍使いの少年が後ろを向こうとした瞬間…
「アンク君、伏せて!!『爆砕鉄拳』!!」格闘家が見事に飛来物を打ち返した。
「…何だったん、ですか?」「人のように見えましたけど、ねぇ…」

──再びフェイヨン──
「そういえば、あいつレベル幾ら?」「15、だってさ」
二人が話をしている最中に落ちてくるユウ・シャー。
「ああ、もう」「ほんとうに」「「ウザい!!」」
『ミニオンブロー』(創作技。ポリンで思いっきり殴る)と『炎帝覇王断』で別の方向に吹き飛ばされるユウ・シャー。

──モロク──
「それにしてもよぉ、本当にチコラブさんって…」軽装の少年が連れの二人に声を掛ける。
「何か飛んでくるわよ」「…ああ、あれか。打ち返したほうがいいんじゃねぇ?」
少女と少年の受け答えの後、青年が踊り出て…「…打ち返せるかな?おおうりゃぁ!」
そして打ち返されて飛んでいくユウ・シャー。

──またまたフェイヨン──
「じゃああれあげたのリフィールなんだ」「うん。けど、あげないほうが良かったね」
二人は飛来してくるユウ・シャーに気付いたそぶりは見せない。が…
「「いい加減にしろぉ!!」更にもう一度別方向へ。
「ごめんなさい、チコラブさん。ご迷惑を掛けてしまって」「君のせいじゃないよ」

──イズルード──
「『水竜神掌』!!」仮面の男の拳がエンシェントデビルを吹き飛ばした。
「ふう…これで、終わりか…」仮面の男は、辺りを見回し…
「なぁりゃぁ!!」見事に飛来してきたユウ・シャーを殴り返した。

──四度目のフェイヨン──
「確かにデータベース作るのに苦労してるよ」「やっぱりそうなんですか…」
無論ユウ・シャーが飛来してくる。
「でも、慣れてくると結構楽しくなってくるんだよね」「…本当に?」
話をしながらまた吹き飛ばす。周囲のPCが心なしか引く。

──プロンテラ──
「…何処行こうかな〜(*m*)」ジャケットを着た少女がカオスゲートの前に立っている。
「黒月さんもいないからねぇ〜(ー3ー)」そこに飛来してくるユウ・シャー。
「う、ええっ!?(゜д゜)」ものすごい音が響く。
…直撃した。のではなく、彼女は間一髪避けて、ユウ・シャーは積まれた樽の中に突っ込んでいた。
…って言うか、壁にもひびを作っていた。
「…あ、あたし、やっぱり憑かれてるのかしら…?(゜ロ゜)」呆然としながら、最悪のパターンを想像してしまう少女。

そしてフェイヨンに戻り…
「何処まで飛んでいったのかな、あの畜生」「人に当たってないと良いんですがね」
…当たりかけてたんですが。いや、人に当たったら即死だっつの。
「そういえば、あのクソ虫、現実世界ではどうなの?」「現実世界でもアホですよ」
お前ら無視か。壁にひび入ってたっつの。

「くそっ、あの魔王め!!俺様の妹をたぶらかしやがって!!接待に、倒してやる!!」
「やかましい、黙れ」夕日に向かって叫んだユウ・シャーに獣の骨を被った男がすかさず攻撃を打ち込んだ。

後日談。やっと念願かなってエクスカリバーを入手したユウ・シャーだったが、あのタッグには勝てず、
今度は壁をぶち破ってしまう結果となってしまいましたとさ。