あるRTWPC達 第28話 精神世界に落書きしよう

「…ふむ。この文章だと計算式はx+y=300と0.05x+0.15y=36だから…分かる?」
「えっと…片方は5x+15y=3600で…えーと…10y=2100で」
「ストップ。これだとx+3y=720にできるから2y=420…y=210で一緒だけど、労力が違うからね」
「じゅあx=90でしょうか…?」「うん。そうだね」
瓦礫の街で、ぱふぇの勉強を見てやってるらしいチコラブ。横に、レーニャとリフィールもいる。
『…なるほど。チコラブは凄いな』「いやいやレーニャ、俺はそんなに凄くないって」
「…嘘だぁ」「えー、リフィール酷いなー、ぼかぁ一般人だよー?そんな驚くほどの定理とか知らないしさー」
『くくっ、あれだけやって何が凄くないものか』「そうだよ〜、チコラブさんってば〜」
「…」話の流れについていけてないぱふぇ。
「さて…眠くなっちゃったからちょっと寝るよ」と言って、瓦礫の中にあったと思われる布団の上に寝転ぶ。
『チコラブ、それは私の布団だぞ…!』「ちょっと借りるね〜w」
『…良し、分かった。其処まで言うのなら…』「変な事をしたらそれ相応の代価を貰うから」
その言葉にびくっとなったレーニャを尻目に、夢の世界へと落ちるチコラブ。

「…それで用件はなんなんだ?」
精神世界に白衣の男が浮かんでいる。声を投げかけた方向には…ドレスを着た女性。
「あの世界ではチコラブだったわね…貴方、あの世界で何を得たの?」
「んー…頼もしい仲間と楽しい時間、かな」「それだけじゃあないでしょう?」
女性が扇子を広げ、口元に当てる。「強大すぎる力を手に入れた…違うかしら?」
「まーね。しかしまあ流石お嬢様、隠し事を見破るとは」
「何がお嬢様、よ。リアルで私に会ったことも無いくせに」
「冗談に決まってるじゃん…」「貴方の冗談は冗談じゃないわよ」
「…また痛いことを」白衣の男ががっくりと肩を落とす。
「それで、本当に何の用だ?会いたくなったから、ってわけじゃないだろ?あんたのことだし」
「…残念ね、その通りよ」「またそんな冗談を」手をひらひらとさせながらの突っ込み。
「よく分かってるじゃない。…閑話休題、今の騒動で『魔王』っているでしょ?」
「ああ。…全く、面倒なんだよなー、だって俺がさぁ…」
「皆まで言わなくても分かるわ。貴方、大変ね。
 それに…味方も居ない。彼らはともかく、その時になったら…ね」
「…やれやれ、困ったもんだ」「その嬉しそうな顔は何かしら」
「そういうふうに見えるのかい?…全く、俺も困ったもんだよなぁ」

…女性が居なくなった精神世界に、犬耳のナースが出てくる。
「何時見ても本当に突っ込みいれたくなるファッションだな、ヒュドール」
「巫女やメイドがよかったかな、チコラブ様?」
「まぁそんなことはどうでもいいんだよ、どうでも…それで、お前はどうするつもりだ?」
「僕?…僕はチコラブ様の相棒だからずっとチコラブ様についていくよ。創造主が何と言おうと…」
「いいのかよ、それで…。全く、シズマっちゃんといい真澄っちゃんといい、人望無いんだなぁ」
「…本人の目の前で言ったら殴られるかもよ、それ」
「真澄っちゃんはともかく、シズマっちゃんは大丈夫っしょ。以前俺に…」
「いや、もう急所踏まれるとか痛いから言わないで下さい。僕も間近で見たんですから」
「…男じゃないくせに」「女だって急所あるんですよ、チコラブ様」
「そう?…ま、俺は男だから女の子とはあまり分からにゃーよ」
「キャラが女の子なのに?」「ああ、それで前襲われた事も有った…」しみじみ呟く男。
「あー、ぜひ見てみたかったなぁ。チコラブ様が襲われるところ」
「代価は1無量大数ダメージとなっております」「ごめんなさい言い過ぎました」

そしてチコラブは(精神が)瓦礫の町へと戻ってくる。
「ん、ん〜」目を開けると…目の前にリフィール、ぱふぇ、レーニャ、真澄。
皆それぞれマジックを手にしている。「…おい、お前ら☆」
「ち、チコラブさんおはよー…逃げろっ!」「逃すか!」
リフィール達よりも早くカオスゲートに移動し、鏡を覗き込むチコラブ。
…額に肉という一文字、頬に髭、鼻と口の間には鼻毛らしきもの、まぶたには目がかかれている。
「…うふ、うふ、うふふふふふふふ」「ち、チコラブさん…大丈夫ですか?」たじろぎながら訊くぱふぇ。
「チコラブさん、笑ってるのか。なら…」『いや・・・甘く見ないほうがいいと思うが』
「…許してくれる、とお思いですかな、真澄っちゃん」「あ、ああ…違うのか?」
…殺気が、立ち込める。4人は命の危険を感じ…それぞれ別方向へと走る。
「逃がすかよ…『禁忌「フォーオブアカインド」』」チコラブが四人に増え、それぞれを追う。

豪快に瓦礫をばら撒きながら走るリフィール。
(とにかく、足止め…足止めしないとぉ…)
だが甘い。そんなチコラブの声が聞こえたような気がして後ろを振り返る。
だが誰もいない。リフィールの足が砂地を踏む。
刹那、砂地が泥地へと変化する!泥に足を取られて転倒。
「これ…クァグマイア!?」「みーつけた」「!?」
廃ビルの上にチコラブが立っている。…右手に油性マジック。
「観念しやがれいたずら娘。…さあ、判決の時間だよ?」
チコラブが廃ビルから飛び降り、リフィールに近づく。
────リフィール、「ごめんなさい」と連呼するも撃沈。

うってかわってぱふぇは軽く、高速で疾走している。
(ブリライトC三枚挿して助かった…とにかく、逃げないと…)
しかし其処にいきなりのハンマーフォール。
「きゃんっ!?」リフィールはその衝撃で転倒し、石畳に頭をぶつける。
「いたた…って、え!?」明らかに通常のハンマーフォールの効果範囲外にチコラブが見える。
「…ぜ、全画面ハンマーフォール、なんですか?」
「ぱふぇちゃん、幾ら君だといったって…容赦しませんよ、僕ぁ」
起き上がり、走ろうとしたところに…再度ハンマーフォール。
「観念しやがれいたずら娘。…さあ(略
────ぱふぇ、この後逃げようと起き上がったところに全画面ハンマーフォールを撃たれて逃げられずに撃沈。

ディアマンテが真澄を抱えて疾走している。
「…創造主、いったい何をしてくれたんだ?チコラブ様、怒り狂ってたぞ」
「いやー、ははは…」其処まで口にした瞬間、ディアマンテがこける。真澄は慣性でそのまま飛んでいく。
「アンクルスネアっ!?」「ディ、ディアマンテ〜〜」そのままディアマンテと真澄の距離が離れていく。
そしてディアマンテの横を…「創造主っ!チコラブ様が行ったぞッ!!」
チコラブが鬼のような形相をして通り過ぎる。「…落書きか」
────真澄、この後電柱に頭を打ち悶えているところを捕獲され撃沈。

(…ふう、危ない危ない。こういうときのためにハイディングを覚えていてよかったとも思えるな。
 さて…ほとぼりが冷めるまで表には出れんな)
地中を移動しながら呟くレーニャ。だが…
ざくっ!ざくざくざくっ!
『…え?』あえて掠りすらしないように刺された刃を見て凍りつくレーニャ。
「ふふふ、レーニャ…お前さんの考える事なんて、すべてまるっとお見通しだぞ?」
そのまさか。チコラブはレーニャが潜っている地面のすぐ真上にいる。
『…逃げられませんか、チコラブ?』「ええそりゃ勿論」
『…分かった、悪かった、頼む、懺悔する時間をくれ。頼む、もう逃げるつもりは無い…悪かった』
「なら最初からやるな…十分だな?」『ああ…ひとおもいにやってくれて構わん』
────レーニャ、自首。

「…ったく、寝る前に言ったろーに」「あー、それは…なんか、こう…いたずらしたくなっちゃって」
「私たち水性で書いたのに…」「チコラブさん、油性とか酷いって…」タオルを濡らして顔を拭いている5人。
『まあ…久しぶりに馬鹿騒ぎで来て楽しかったかと問われれば楽しかった、と答えられるがな』
「まーそうだよね、リフィールだってこんなにバカ騒ぎしたの久しぶりだなーw」
「…なんかむかついてきたから全画面ハンマーフォールぶち込んで良い?」
「チ、チコラブさん、勘弁して…」「聞いただけで鳥肌が…」
『ま、まぁまぁ落ち着け、チコラブ』慌ててチコラブをなだめに入るレーニャ。

「さて、どういったセリフを用意してやるかな…滅多にないチャンスだし、徹底的にやってやりますかな」