あるRTWPC達 第17話 なんだか居ない筈の奴

おなじみフェイヨンダンジョン前に4人の人影…説明は割愛。
「…チコラブさん、本当に怒ってないよな」「全然」不安そうな顔で聞くカズと、何で?と言う顔で返すチコラブ。
「…心広いわね」「怒るのが面倒なんだよ」感心したとたんそれが間違いである事を感じるセリンだった。
「ああ、そうそう。今はちょっとソーサラーやってるから…銃は期待しないでね」
と言いつつ、盾装備可能をセットしてシャハルの鏡を装備するチコラブ。

「…そういえば、CFCなるものを聞いたんだが」ダンジョンの中でレツヤが口を開く
「何それ?クロスファイヤークラッシュ?」「訳がわからないわね…」
「あ、俺も聞いたことがある。確か…チコラブさんの…ファンアート!」「アートはCじゃないわ」
「ああ、ファンクラブ…そういえば僕のところに来ようとしてる人たちが迷い込むって良く聞くけど…」
「本当に不謹慎じゃないか?」「萌えればそれでよし♪」周りの三人の気が抜ける。
「いいのかよそれで…」「おっけおっけ、全然おっけ♪」

「霜符『フロストコラムス』──」辺りに冷気が発散される。
チコラブの周囲に居たマンドラゴラや、ムナック等モンスターが凍りつく。
「おりゃあ!!」「はぁ!!」「ライトニングボルト!」
それを、三人が間髪入れずに砕く。
「うん、順調だね」「…なあ、チコラブさん。あの魔法、何処で仕入れてきたんだ?」
「ん?…秘密だよ?ちなみに、本来は呪符か何か媒介を使うんだけど…」
そう言ったとたん、チコラブの耳や尻尾が緊張したように動く。
「…其処だ!」研ぎ澄まされた冷気の一閃。ファミリアーが、片方の翼を失い落ちていく。
「…あ」「…え?」「…おい」「…多いわね」「普通は群れてはこないんだけどね…」
彼女達の目の前にはモンスターがずらりと並んでいる。
…どの魔物が放ったのか分からない咆哮が響き、突撃して来る魔物たち。
「なんかいやな予感もするし、さっさと倒すか──雹符『ヘイルストーム』」
雹弾が乱射され、カズやレツヤはそれを縫うように魔物に攻撃を加える。
「サンダーストーム!ユピテルサンダー!!」後方からのセリンの支援。

「…終わった、かな?」「ああ、辺りに敵はもう居ないはずだよ」
そのとき「何パクッてんねん、兄ちゃん」チコラブの後ろから、声。
「ああ、りくぽん」「「「…誰?」」」其処に居たのは、竜人の男。
「僕の弟の陸対天流、通称りくぽん」「りくぽんゆーな、恥ずかしい」
「で、だ。りくぽん、レベル上がった?」「無視かよ。…まあ、60代まで来たぞ。もうすぐ追いつく」
「残念だけど、僕は今75」「はぁ!?早いっての」
「…何か」「似てるわね」「…二人とも、そう思うか。俺もだ」

「…よし、もう一匹辺りでマスターかな」手についた霜を振り払って言うチコラブ。
「…早いわね」「セリンですら、まだLv3だぜ?チコラブさん」
「まあ、途中まで上げてたからね。
 ガンスター実装されてすぐに飛びついたから、Lv4で止まってたし」
「チコラブさん…一体何者?」「変態」チコラブの代わりに、陸対天流が答えた。
「ま、間違ってはいないけど…皆、下がって」「え?」
その場にいる全員が少し下がる。すると、今まで彼等が居たところに召喚陣が浮かび上がる.
「…おい、どういうことだ?」「はてさて…何が出てくるんでしょうか、と」
そして召喚陣の中から魔物が現れる。現れた魔物は…
「…うわ、なんじゃこら、見たことの無いモンスターが何で…」三つの首と炎の尾を持つ魔獣が現れる。
「召喚されたんだから関係ない」「まあ兎に角、放置すると他のプレイヤーに迷惑よね」
「…んじゃ…さっさと潰すか」「そうだね、ついでにとっととソーサラーマスターしたいし」

…予想以上に苦戦する。
「くそっ、体力は残りどれだけ有るんだよっ…化け物か!ソニックブロー!」
「魔物ってのは基本的に化け物だよ…っ、アイスウォール!!」
「そりゃそうだ。…テンペストストリーム!」
「でも、もうすぐ倒れるはずよ…ファイヤーピラー!」
「斬鬼!…ああ、感触が弱弱しくなってきて…うおっ!?」
レツヤがファインシールドで攻撃を受け止める。
「…セリン!」「ええ、行くわよ」「「『ビッグバン』!!」」
二人が同時に魔法を放つ。効果が相乗され、強大な爆発が起こった。
…ジョブレベルアップ。チコラブがソーサラーをマスターした。
「…よし。それじゃあ今日はここらで打ち止めにしましょうか」
「そうね」「お疲れ様、チコラブさん」「じゃあオカリナ使って清算だな」
「あー、俺別にいいよ。もうちっと此処で狩るから」
言いながら陸対天流が輪から離れる。
「…りくぽん、そんなキャラだっけ?」「五月蝿い」
「ま、冗談はここらにしますか。それじゃ、えと…ああ、あったあった」
荷物袋の中からオカリナを引っ張り出し、吹き始める。
四人は、光柱に包まれた。

「今日もありがとな、チコラブさん」「ううん、別にいいよ」
「それじゃあ、俺はこれで」「私も用事があるから」
カズヤとセリンが現実世界へと帰る。
「さて、俺も落ちるな。見たいテレビが始まるんだ」「うん、おつ〜」
残ったうち、カズも現実世界へ。チコラブは、カオスゲートへと向かう。
しかし…彼女は歩みを止め、二丁の拳銃に手をかける。
「キミがストリボーグやメディウムと対等に戦った人間かい?」
夜の闇に、染み出すように出てきた少年が言う。
「…はて。名前は聞いたことないけど、あの騒動のときの悪魔と女性?」
「ああ。ストリボーグは漆黒の殺人鬼に消されたけど」
「ストリボーグってのは悪魔か…。それにしても最近はイレギュラーが多いね、どう思う?」
「ああ、いい環境で何よりさ」少年は、笑みをたたえながら頷く。
「俺の本心は逃げろと言う。僕の興味は進めと言う。…楽しんでるのかな、私は」
「楽しんでいるんだろう?」「はは、慣れない事は言うもんじゃないよね」
「…さて、僕は言伝があって、ね。漆黒の殺戮貴と仮面の狩人に伝えてくれないかい?」
「ま、覚えて居たらね?」言いつつ、二丁拳銃をホルスターへ収める。
「あと、『神』にも。祭りは、楽しもうぜ?ってな」
「…ま、あの人たちは楽しめ無さそうだけどね」腰に手を当て言う。
「それと、だ。朱色狐は僕たちは興味ない。ストリボーグが勝手に狙っただけだ」
「随分紳士的だね。その心遣い、感謝しておくよ。それにしても、月が丸いね」
「所詮は『造られし物』だからな。じゃあな、首輪の銃王。僕、メルクリウスはここらで退散するぜ」
「じゃあ、『祭り』にでも」「分かってんじゃねえか。楽しみだよ」
それだけ言うと、少年は闇に溶けるかのように消える。
「ああ、そうそう。プレゼント、有難う」「バレバレかよ。まあ、そうでねえと楽しめねぇがな」

「チコラブくん、何の用だい?」「ごめんね、呼び出してさ」
瓦礫の街、レーニャにチコラブ、そして黒月緋純とイデモンが居る。
「先の騒動、覚えてるよね」「ああ。時を止めるあの女性と悪魔、か」
『だが、それが何か関係あるのか?』「…なるほど、彼等の仲間が来た、と」
「ああ。少年…メルクリウスと名乗っていた、が来たよ。ま、要するに宣戦布告?」
『…ハッキリしないな』訳の分からない言動を聞いたものだ、とレーニャは思う。
「なるほどな。それで?」「や、まだ本番はいつかは聞いてないよ」
「それでも、この状況を鑑みれば…」『来ない事はない、か』
「そう言うこと。GM諸氏には迷惑かけちゃうね」『私だけで腹八分なのだろうがな』
「それで、レーニャは?」「大丈夫、興味ないってさ」
あっけらかんと、さもそれが当然であるかのごとく言う。
『そうか、私には女としての魅力が…』「違うだろ」
レーニャのボケに絶妙な突っ込み。
「…まあ、兎に角注意しておいたほうがいいか」「そうだね、ヒスミン」

…さあ、彼等は一体歴史に何を刻み、綴るのか。 歴史上、一介の塵芥にしか過ぎない闘い。だが、彼等にとっては、それが重要なのである。