あるRTWPC達 第13話 おいでませ最強のDOP様

「…さて。天流よ」「何?」
「…だからやめろといったのによ。いくら俺でも単騎でDOPは無理」「…スマンの極み…」
「すまんじゃすまんから。よりにもよってみずかDOPとか…
 まあ、今は冥魔出現前だということで人も多いから何とかなろうが…」
ご存知、RTW。ここは、暗黒都市シンジュクのある一角。
ドッペルゲンガーという最強のモンスターと対峙している二人の人影。
いつもどおりの猫耳・首輪・ワニ尻尾の少女・チコラブ(中身は男)
そしてその横に居る竜の角・尻尾をつけた男…陸対天流。
彼は、チコラブの弟である。現実世界では、兄と似ている似ているといわれたりもする。

さて、何故彼等がこんな目にあったのかというと──────────
「あ、おい。ちょっと…」「ん?何か用か?」
暗黒都市新宿の一角。…というか、場所は移動してはいない。
「古木の枝使いたいんだが、強いモンスター出たときのためにさ、一緒に居てくれるかな?」
「OKOK、冥魔出現前だから…いや、まて。俺これから冥魔狩りに行きたいんで今は止めとけ」
直後に現れるみずか。「…御免、もう使いますたw」

「まあとにかく今は助けが来るまで適度な距離で逃げなな」「おう」
そういって、二人は駆け出した。わざと追って来れやすいように、道路を。
他人を狙わないように、威嚇射撃で適度に牽制する。
既にHELP信号は出しているので、後は助けを待つばかり。

そして助けは来た。
「ファイヤーボール!」「炎帝覇王断!」「濁流剣!」「メロー・ファ!」
獣の骨を被り、マントを着込んだ男…黒月緋純。
大斧を背負った可愛らしい幼女…リフィール。
純白の羽根を背負った男戦士…バルムンク。
仮面を被り黒い外套を着込んだ男…イデモン。
(…まさか俺が今知ってる中の最強PC’s来るとは…)チコラブは予想外のメンバーが来たことに絶句。
「大丈夫?」「大丈夫ですか、チコラブさん?」「大丈夫か?」「大丈夫かい?チコラブくん」
「え、ええ、まあ…。さて、それでは」「ああ」「そだね〜」「…」「にやにや」4人が吹き飛ばされたみずかに向き直る。
「てい」陸対天流が何かを使った。よく見れば、古木の枝。その瞬間、辺りにポリンやポポリン、マスタリンが出てきた。
「「「「「…」」」」」5人は絶句。「何しよる、阿呆がぁ!!」近くにいたマスタリンを陸対天流に対し力いっぱい放り投げる。
「えー…味方増えたから敵増えても大丈夫かなー、と。」謎の理論。応援四人があきれる中…
「まあ、ポリン系統だけならいいか…実験中の”あの技”も試してみるか。『マスターストライク』!!」
チコラブがマスタリンを今度はみずかのほうへと投げる。
更に、着弾する前に辺りのポリン・ポポリン・ドラップスを一掃した。
すると、マスタリンはみずかに当たる直前にドラップスを呼び出した。
それはまるで散弾銃の弾丸のようにみずかに直撃した。
「なるほど、取り巻き召喚を利用した技か…」バルムンクが感心したように言う。
「けどチコラブくん、マスタリンをどうやって呼び出すのさ?」イデモンが尋ねる。
「んにゃ、流石に其処はねぇ…。一応、この後ジノちゃんの提案からどんなことが出来るか試してみるつもりだけど」
「頑張ってね、チコラブさん♪」「うん」笑顔で言ったリフィールに笑顔で返す。
「さて…じゃあ、其処のキミ。どんな調理方法が好きだ?」黒月が言う。
「銃で蜂の巣♪」「十七分割」「ミンチにしてあげよっか♪」「それともスープ、とか?」
…陸対天流は感じた。この四人から発生する殺気を。…バルムンクは黙って見ている。
みずかは、何も言わずに走ってくる。「はい、フルコース一人前御注文〜♪」
「「「オッケイ!!」」」チコラブ達奇人四人の目が光った…ような気がした。バルムンクも、ため息をつきながら構える。

───何らかの理由で音声系統の機器が故障したため、暫くお待ちください───

『それは大変だったな、チコラブ』チコラブに狐の皮を被った少女が楽しそうに声をかける。
「おうともよ、流石にDOPは参った。…お、出た出た」チコラブが出したのは猫耳のついたポリン。
辺り一面、瓦礫のフィールド。当事者はここを『瓦礫の町』と呼んでいる。
…といっても、チコラブとこの少女─レーニャの二人だけだが。
『…?猫耳の…ポリン?』チコラブが召喚したポリンをレーニャが覗く。
「おう。ちょっとジノちゃんが呼べないかって言ってたからね…
 流石に未実装のものを本番で出すわけには行かないから、こっちでやってみた」
『全く、向うも狭苦しいな…』
こんな会話を普通に行えるのには理由がある。
この町は、厳密に言えば『RTWの外にあるマップ』ということになる。
つまり、GMたちは現時点でここに干渉はしてこれない、ということだ。
「じゃあ、次は…てい!」獣の骨を被ったポリンを召喚した。
…と言うか、獣の骨の中にポリンがいるような状態ではある。
「ぶわははははは!!」『あはははははは!!』笑い転げる少女達。
『ひぃー、ひぃー、腹筋痛い…』「いやあ、黒月ポリンって、かわ…ぶはははは…」

「じゃあ、イデモンポリン!」召喚されたのは仮面を被り、黒い布キレを身につけたポリン。
爆笑を続けながらも、長い耳が突き出た「ハサハポリン」や青いヘルメットをかぶった「ロックマンポリン」、
プロペラを背負った「ジャイロマンポリン」・ピンポン球大のとげ付き鉄球と小指の先くらいの大きさの盾を持った「ナイトマンポリン」、
V字型のアクセサリーを頭につけた「クイックマンポリン」等を召喚した。
『あはははは、笑い死ぬぅ…』「くはははくはくははぁ、まだまだ、ハリーポリン!!」
次に出てきたのは額の辺りに稲妻型の傷、眼鏡をかけたポリン。勿論二人、笑い転げる。

「さて…おなかの運動もしたことだし、技研究、…行きますか。…おなか痛いけど」
『あ、ああ…そうしてくれ…。死ぬかと思った…』息の荒い二人。
(…レーニャって、一度死んだんじゃなかったっけか)
そう思いながら、チコラブは的になる空きビンを幾つか置き、チコラブ自身は距離を取る。
「さて…来い、マスタリン!」チコラブの手にマスタリンが召喚される。
「いっけえぇぇ!!『マスターストライク』!!」マスタリンを思いっきり投げる。
パカァーン。「…あれ?取り巻きは?」倒した空きビンは一本だけであった。
『…こういう技なのか?只のミニオンストライクにしか見えんが』レーニャが心配そうな顔で言う。
「や…散弾銃の要領の取り巻き達の広範囲攻撃なんだけど…」チコラブが頭をかく。
そして暫く歩き回り…自分の体を見る。「…ああ、そうか。なるほど…」そう呟いたチコラブは、再度空きビンをセットする。
「『マスターストライク』!!」今度は、マスタリンをしっかり見つめる。そして、当たる直前に…
「呼べぇ!!」そう言ったとたんに、ドロップスが出現。丁度良く全てが的のビンに当たる。
「…いよっしゃあ!!」ガッツポーズ。十本ほどあったビンが、全て倒れていた。
『なるほど、こういう技か…。だが、指示を出さねばならん分射程が短くなるな』
「…確かにねぇ…」レーニャにそう答えたチコラブは、瓦礫の山に近付く。
「…お、こいつは…いいアイデアが浮かんだかも」チコラブが瓦礫の山から拾ったものは…爆弾。
『…そいつは使えんぞ?火薬が湿っているらしい』レーニャが言う。
「や、この爆弾そのものを使うんじゃない。…着弾時に爆発させるんだ」笑顔で返す。
『…爆発、だと?…まさかポリンに火薬詰めるわけではなかろうな』自分の意見に呆れつつ喋る。
「んな阿呆な」チコラブは、もう一度ビンをセットした。
「マスタリン、今度は当たる直前に取り巻き召喚、な。『マスターストライク』!!」
マスタリンは、チコラブの言い付けどおりにヒット直前に取り巻きを呼んだ。
結果は、先ほどと同じである。「オッケ!」チコラブは、割れたビンを瓦礫の山に捨て、割れていないビンを回収した。

「さて、次だ」『今度は何だ?』
「やはりポリン使いとしては攻撃だけでなく防御にもポリンを使いたいね。ということで…
 レーニャ!力いっぱい殴りかかれ!!」そう台詞を言いながら自分を指差すチコラブに、レーニャはかっこいい、と感じた。
『…解った。ちゃんと、防御しろよ!』レーニャが持っていた鐘を下から振り上げる。
ボスッ。「…うん、何とか反応できるね」チコラブはポリンを使って鐘をガードしていた。
『…待て。今、渾身の力を込めたぞ』「こっちもそれ相応のENつぎ込みました」
…その後も、『マスターストライク』やポリンを使ったガードを練習していく。

投げられたポリンがかくっと曲がり、的に当たる。
「…まあ、ここらへんはミニオンの範疇だろうなぁ…」チコラブがまじまじと自分の手を見つめる
『…お前、いっそのことポリンマスター、とか名乗ったらどうだ?』
「…いいかもね。…あ」『…?どうした、チコラブ』何かに気付くチコラブとそれが気になるレーニャ。
「…別に彩色しなくてもいいんじゃん、俺…」『…ああ、バレーボール大会、か』
「…あの腕の痛みはなんだったのよ〜」呆然とするチコラブを見て笑うレーニャ。
(…全く、チコラブといると退屈せんで済む、な)事実を再確認したレーニャだった。

『…そうだ,チコラブ。言い忘れていた』「ん?」カオスゲートに向かおうとしていたチコラブにレーニャが声をかける。
『…昨日あたり、空間が震えたんだ。…何か、いやな予感がする、気をつけてくれ』
「…分かった。それとなく警戒しとくよ」そう言うと、チコラブはカオスゲートに移動した。

瓦礫の街に残ったレーニャは、会話ログを見ながら思考を張り巡らせていた。
(この会話ログ…謎だらけだ。一体何があったんだ…?
 助けを求めているかと思えば、一転して態度が変わっている…
 それに…キャラ方針も前までは魔法のようだがこの辺りから戦士系にしている…
 …キャラ名だけでも言うべきだった、か?何も無ければいいのだが…)
太陽が、落ち始める頃だった。