あるRTWPC達 第29話 真の魔王、偽りの魔王

「『聖獣神衝』!!」魔術師風の男の形をした魔物に強烈な槍の一撃を放つアンク。
「…さて、これで『魔王』とやらの手がかりがつかめなくなりましたね」
魔物が消滅するのを見ながらナイラが呟く。
「そうですね…『魔王』の手がかりを探しながらというのはなかなか難しいものですし」
「『魔王』に関するイレギュラーもこれで全部…本当に『魔王』なんているんですかね?」
話し込むナイラとアンクにチコラブが割り込む。
「ナイラさん、アンク君、甘いねぇ…ぢつは『魔王』の情報、新しい情報があるんだよね」
「チコラブさん…本当に一体何者なんですか?」「さて、何者だか分かるかな?」
「…分かりませんって」何者かと問うアンクはそんな答えで返すチコラブに苦笑いする。
「んでも、ナイラさんが代行者だとは…意外だなー。てっきり僕かと思ってたよ」
「まあ…その点は私はよく分かりませんね。殆ど興味ないので」

「…本当にここが魔王の本拠地なんですか?」「…らしいんだけどなぁ」
其処はまるで、薄暗い館の中のようなフィールドだった。
不意に、空間が歪み…
真澄、リフィール、ぱふぇ、ダリア、レーニャ、ニフリート、ディアマンテ、ジェイドが出てくる。
「ああ、真澄っちゃん。…なんでこんなところに?」「お前たちがここにいるから来たんだよ」
「…どういうこと?」「あのね、真澄さんが…何かニュースがあるんだって」
「ニュース?」「ああ、二つ有る」神妙な面持ちでチコラブを見つめる真澄。
「…二つある?それなら良いニュースと悪いニュースか、悪いニュースともっと悪いニュースだろうねぇ」
「…まあ、前者だな。どっちから訊く?」「良いニュースに決まってるじゃないか」
「…良いニュースは、魔王の居場所が特定できたんだよ」
そのセリフに対し、チコラブは笑顔を見せ「そうか、それじゃあこの面倒な騒動にピリオドを打てるんだねぇ」
「…悪いニュースだが」其処まで言って、ジェイドがモップをチコラブに突きつける。
「ジェイドさん!いったい何を…!!」割って入ろうとしたアンクをナイラが制する。
「…真澄さん、まさか、『魔王』とは…」真澄が次の句を繋ぐ前にチコラブが口を開いた。
「『魔王』の名は…チコラブ。そう、僕だ。悪いニュースとは、それなんだろう?」
「…え?」リフィール、ぱふぇ、ダリア、レーニャ、アンクの顔が凍る。
「…よくわかったね、真澄、ナイラさん。ナイラさんは先刻気付いただろうけど、真澄…何時気付いた?」
『待て、チコラブ』レーニャが口を開く。『お前が…『魔王』だと?嘘だろう?』
「嘘じゃない、本当の事だ」『…ならば、私にかけた言葉は…全て嘘だったのか!?』
「嘘じゃない、本当の事だ。…信じて、くれるよな?」『…』
レーニャは、涙を溜めチコラブをじっと見据える。チコラブは顔を真澄に向ける。
「…それで、真澄。何時気付いた?」「…ついこの間だ。お前こそどうなんだ?」
「先の落書き騒動の時…いや、その少し前だな」目を瞑り、しみじみと呟くチコラブ。
「…嘘、ですよね…?チコラブさん…あなたが…何故…?」
「…理由なんて無い。さて、おしゃべりもここまでにしよう」
モップを手元に引き戻すジェイド、その場にいる全員から歩いて離れるチコラブ。
「さあ、存分に戦り合おうじゃないか。
 …断罪者、代行者、管理者、そしてそれに与する者どもよ…『魔王』の力、思い知るが良い」
『チコラブっ…!!』レーニャを遮るように、真澄が出てくる。
「…チコラブ、お前は何か勘違いをしているな?」「ヒュドールならば、お前の元には戻らない」
「なんだと!?」先読みされた答え。そのあまりもの意外さに驚く真澄。
「ヒュドールは…俺についてきてくれる。
 ヒュドールを俺の元から奪い、戦力を削ろうとしたんだろうが…残念だったな」
「…いいだろう、イレギュラー『魔王』!!貴様の業を果たすのは…この地こそが最初で最後だ!」

「…皆さん。彼女を信じるならば…戦いましょう」
「お父さん、何を言って…!!」「チコラブさんを、倒す。彼女を業から救うためには…それしかないんですね」
『…それじゃあ、勝てばチコラブは私たちの元に戻って…?』
「どうだか分からない。分からないけど…これ以外に方法は無いよ、レーニャ」
「…でも、消耗した私たちで…真澄さんたちを止められるんですか?」
「わかりませんが…状況はこちらが少々有利になります。後は、この世界で培った経験が物を言うでしょう」

…そして、死闘が始まった。
「『ストームガスト』!!」真澄が唱えた魔法が火蓋を切った。
「『ダブルストレイフィング』!」『ファイアーボール!』真澄の魔法に続き、ダリアとレーニャが攻撃を放つ。
「STS(スキル・トレース・システム)『ストレイヤーヴォイド』」
亜空間を通じてチコラブが真澄の真後ろに移動、斬撃を繰り出す!
「甘い!」ディアマンテが真澄をかばい、斬撃を受け止める。
「『発勁』!」ナイラがすかさずチコラブに攻撃を加える!
「『炎帝覇王断』!!」吹き飛ぶチコラブをリフィールが迎撃、
「『スピアブーメラン』!」「『トリプルドゥーム』!」「『ビッグバン』!」「『カラミティ』!!」
アンク、ジェイド、ニフリート、ぱふぇが次々と畳み掛ける。

「これで、どうだ…?」「…どうやら、みんなを見くびっていたみたいだね」
「しぶといっ、『雲耀之太刀』!!」真澄が裂帛の魔力を剣に込め、チコラブのいる場所へと叩き込む!
だが、その斬撃は…『ピッカード』で受け止めている。「諦めの悪い…!!」
「そうだとも…」「創造主、皆、離れる!」チコラブの言動を聞き、ヒュドールが気付く。
「遅い!STS・エクステンド…『聖体降服+グランドクロス』!!」
チコラブの居た所とその周囲が聖なる光で包まれ、真澄が飲み込まれる!
「まさか…本家の『グランドクロス』!」「じゃあ…チコラブさんの体力は…」
「…期待しないほうがいいかもしれません。先ほど、聖体降服と聞こえたんです。
 …十中八九、反動のダメージはありません」
光が収まり、真澄の体が見える。そして、その傍らに佇む影…チコラブだ。
「…第二ラウンドと行こうじゃないか」…髪が銀髪に変化している。
「あ…あれは…!?」『銀髪化…まずいぞ、あの状態のチコラブの攻撃は…オリジナルとは比べ物にならないぞ』
「それだけじゃないですよ、レーニャさん…
 あの状態のチコラブさんは、技を組み合わせてその技の性質を持つ技を放つんです…!!」
「…勝ち目は、薄そうですね。何か、突破口は無いものでしょうか…」
既に、緊張した空気が漂っている。
「そちらから仕掛けてこないのならば…こちらから行かせて貰おうか。
 STS・エクステンド『メタルブレード+ジェミニレーザー』!!」
チコラブは何処かから円刃を取り出し、それをあらゆる方向へと放つ!
「円刃は私に任せて!」ダリアが手早く円刃を迎撃、無力化していき…
「『トワイライトナイトメア』!」ニフリートが魔法を放つ!
「STS『マジックロッド』!」放たれた魔法はチコラブの魔力が中和、吸収される。
「そしてSTS『ソウルブレイカー』!!」漆黒の衝撃波がチコラブから放たれる!
「おおおぉぉぉっ!!」ディアマンテが衝撃波を…相殺する!!
「ぐっ…」「ディアマンテさん!!」だが威力を完全に殺せたとは言えずに膝を付く。
「『ファリプス』」「させるか、STS『スペルブレイカー』!」
ジェイドの掌に集まった魔力が霧散する。
『ハンマーフォール!!』ジェイドに気が向いている間の不意打ちが決まり、チコラブがよろめく!
「『阿修羅覇王拳』!!」「『炎帝覇王断』!!」「『マスターストライク』!!」
3つの技が見事に決まり、チコラブが壁まで吹き飛び…めり込む。
「…皆、気を抜かないで」「言い方悪いけどチコラブさんならあんな状態でもぴんぴんしてそう…」
「ぴんぴんしてるとは酷いな…っつ…」チコラブが壁から出てくる。
「その減らず口、すぐに叩けなくしてやる!」既にディアマンテがチコラブの目の前に!
「ディアマンテ、迂闊すぎ…」

鈍い音が響く。

ディアマンテの体は吹き飛び反対側の壁にめり込む。
「…な…」「STS・ダブル・エクステンド…『オートカウンター+シェルブリット+超熱拳』」
「ディアマンテ!大丈夫!?」…返事が無い。
それどころか、瓦礫がディアマンテを隠すように崩れる。
「これで二人…だ。…ニフリート、『勝ち目が無い』と考えているようだが…果たして他がそう思っているか?
 戦う気が無いのならば…ここから去れ」震えるニフリートを見据え、言い放つ。
「どういう、こと?」「さてね。自分で考えろ」
『…チコラブ、もう…止めにしないか?』「…レーニャ」レーニャが口を開く。
『何故…仲間内で戦わなければならないんだ!?何故お前と戦わなければいけないんだ!?
 お前はチコラブだろう?魔王ではないんだろう!?』「甘いな、レーニャ」
『え…?』信じられない、まさか、そんな。
「確かに俺はチコラブだ。だが…同時に『魔王』であると自分で認めたんだ。
 だからな…ここでお前たちと戦うのも、俺の選択の一つだ」
『何故、そんなことをする!お前は、笑っていたんじゃないのか!!
 あの日常を…楽しんでいたんじゃないのか!?』
「だから倒せといっている。俺を元の『チコラブ』に戻したいのならば、とち狂った俺の意思をねじ伏せろ」
『だが、そんなことをすれば、チコラブは…!!』
「死ぬ、か。確かにそれも、俺の意思が招く結果だ、恐れはしないさ」
『…大馬鹿者…!!』「ああ、大馬鹿者だよ…全く」

「…けど、どうするんですか?真澄さんが倒れ、ディアマンテさんもやられてしまった…
 2回とも…不意打ちのような形でようやくダメージを与えられたんですよ?どうすれば…」
「大丈夫ですよ、アンク君。…奥の手を出します。…とっておきのものを」
ナイラがそう言い放つと、大量のモンスターが現われる。
「ナイラさん…これは…まさか!」「ええ。前に戦った…口の悪い少年の能力です」
ナイラが眼鏡の位置を直す。その時にチコラブは気付いた。
「…なるほどな、その指輪、そんな能力があったのか」「ええ。いつのまにか荷物の中にありましてね…」
「…ナイラさん、あんた結構大胆だよな」「真澄さんのお墨付きをいただいてから装備しましたが」
『…私の事を忘れてもらっても困るな』レーニャが大量の九尾狐を召喚する。
「…そうか、レーニャ。お前も不完全なデータとはいえ取巻き召喚ができるんだな」
『…』「お前等がこの戦いに勝ったら、真澄っちゃんにデータ更新してもらいな」
「それで…チコラブさん、どうするんですか?多勢に無勢…かなうとは思えませんが」
「…さて、それはどうかな。STS『恋符「ノンディレクショナルレーザー」』!」
チコラブがレーザーを辺り構わず放ちだす!
「きゃうっ!」「うあっ!!」ダリアがレーザーに直撃、戦闘不能のダメージを追う。
ジェイドもレーザーに直撃はしたが、戦闘不能になるようなダメージは受けてない。
『おおおぉぉぉっ!!メマーナイトっ!!』
レーザーの間を縫ってチコラブの懐に潜り込んだレーニャが…金の入ったとても重い袋で殴りつける!!
「っ…!!」今度は横に飛ばされるチコラブ。壁に衝突、めり込む。

『…これで、どうだ…チコラブ…?』「ああ…分かったよ。お前らを本当に見くびりすぎていたのが…」
その言葉が聞こえた途端、チコラブがアンク達の真横に出現する!
「STS『ストレイヤー・ヴォイド!』」紅い斬撃で、ジェイドとニフリートをねじ伏せる。
「『炎帝覇王断』!!」リフィールの高速の一撃を回避するチコラブ。
だが…「『ハイドライバー』!!」リフィールの影からぱふぇが追撃を放つ!
「こざかしいっ!!」それも難なく回避して…「『ブランディッシュスピア』!!」」
アンクの槍の一撃が目の前に来るのを飛び越え…「『水龍神掌』!!」
それを『絶対冷凍拳』で相殺する。そして、二人とも着地。
「…さすが、チコラブさん。生半可な連携では…攻撃が通じない」
「まあ、ヒュドールが居てこそのものなんだよねぇ、これ…」

「でもお前のヒュドールはただの偽者だけどな」

意外な声。聞こえる筈の無い声。いや…聞こえるべきセリフが違うからこその違和感。
「…この声、チコラブさん?」『…ど…どういう…事…だ…?』
「全く、巧妙すぎる偽者だぜ。俺がやろうとしていたことを全部やってくれるとは…感謝するぜ、
 実は結構面倒だったんだよな、この演出…ま、とりあえず礼はさせてもらう。遠慮するなよ」
「なっ、どっ、何処だ!何処に…!!」その場にいるチコラブが混乱する。
「STS・エクステンド…『彗星「ブレイジングスター」+外力「無限の超高速飛行体」』」
「…っ!!」信じられない、といった顔でいきなり出来た空間の切れ目を睨みつけるチコラブ。
空間の切れ目からは…巨大な光帯が次々と発射されてくる!!
最初からその場にいたチコラブは光帯に包まれ、別の場所からチコラブがもう一人、降りてきた。
「チコラブ…さん?え、でも…」「いやなに、そいつは偽者よ?」
『…な、何だ…チコラブ、驚かすな…』「でも俺のやろうとしたこと全部こいつがやったからちょっとむかつく」
その一言に、その場の全員がたじろぐ。
「…なるほど、より信憑性を高めるためにチコラブさんのやることの真似をした、と…」
「そう。さて…回復してやらないとね。『レイズデッド』」
戦闘不能に陥った5人にそれぞれレイズデッドをかけるチコラブ。
「…ち、チコラブさん…これはどういうことだ…?」「偽者。『偽りの魔王』よ、こいつは…ね」
「『偽りの…魔王』?」「ああ。…さて、と。そろそろ本性を現してくれるとは思うんだけどなぁ」
光帯が弱くなっていくのを確認して呟くチコラブ。

最初から居たチコラブが居た場所には何も無く…
代わりに、虚空からその場にいる面子…チコラブを除いた9人が現れる。
「くそっ、『偽りの魔王』とやら…趣味が悪い」
「休憩してて。…俺が全部」「チコラブさん、彼らは任せてください」
「…え?」「チコラブさんは親玉と戦う準備を…『時間停止』」
瞬殺。他人の目にはそう映るこの光景だが、ナイラとチコラブは一部始終が見える。
「…ああ、その指輪…ナイラさんが持ってたのか」
「チコラブさんの物でしたか」「ま、いいや。俺はシャハルやこいつがあるから」
そう言いつつ、バスターシューターを見せる。

「…え?」「一瞬で…全滅?」身構えた7人が驚愕する。
「…時間停止、か」「その通り。…さて、大ボス様の登場かね」
後ろを振り向くと…一人の黒いローブを纏った少年が。
「なるほどそこまでの力の持ち主…だが、我は倒せまい
 なぜなら、我は貴様らの能力を掌握した。負ける要素など…無い」
「いや、負ける要素ならある。情報の不足…あんたが負けるとしたら、これ以外に無かろう」
「…ほざけ」少年がそう呟いたとたん、時間が止まる。
「ナイラさん、皆を頼みますよ」「ええ。大丈…」
止まっていた時間が破壊される。「この程度で我らに勝てると思うなっ!!」
「ちょ、だからディアマンテ迂闊だって…!!」
次の瞬間、ディアマンテは壁に激突した。

「…寝てろワンパターン(汗」チコラブがディアマンテを移動させたのだろう。
『チコラブ…』「大丈夫大丈夫、ちゃんと倒しますよ」
「…我を倒す、か。くくっ、面白い事を。ならば、やってみよっ!!」
時間を超える高速での攻撃が繰り返される。
「ぐっ…これは…ディアマンテの…!!」『チコラブ!!』
吹き飛ぶ暇もないほどの連続攻撃。
「…楽勝」チコラブがポツリと言った。
「ふん、手も足もでない…確かに楽勝だ!!」
「いいや、こっちが楽勝なのよ…『桜符「完全なる墨染の桜 ‐開花‐」』!!」
禍禍しいほどに白い桜の花びらが辺りを包み込む!
「ふん、高速で領域へと突入する事を前提としているのだろうがな…」
「なぁに、ただの時間稼ぎだよ。…ヒュドール、いくぞ!」
そう言った瞬間、今度は光が辺りを包み込む。

光が弱くなる。…チコラブの背に、紅い翼の天使が見える。
「…ヒュドール!!」…まあ、天使はナース服に犬耳という珍妙極まりない姿なのだが。
「バスターシューター、完全開放…これが発動した時点で貴様の負け。敗因確定」
「…くくっ、大層な天使様を背負い込んでそれで我の負けが確定か。
 貴様の脳髄の方に負けを刻み込んでやらねばならぬようだな」
「強がりも其処までだぞ?ボウヤ」そう言った瞬間、『偽りの魔王』が切り裂かれる。
「な…!?」攻撃した兆候はない。一体どのようにして切り裂かれたのか。
「STS・ダブルエクステンド『メタルブレード+ジェミニレーザー+バミューダアスポート』
 俺の能力を完全に掌握したとしたら、この程度は避けられないとねぇ」
言い切るのを待たずに跳ぶ。
「STS・ダブルエクステンド『エリアル・レイド+チャージキック+彗星「ブレイジングスター」』!」
巨大な光帯となり…『偽りの魔王』めがけて突撃する!!
「くくっ…」『偽りの魔王』が深く構える。「チコラブさん!カウンターだ!!」
「今更気付いたところで遅いわ…喰らえ!」
「遅くないってーか間に合ってるよん?プラスエクステンド『疎符「六里霧中」』」
絶妙なタイミングでのカウンター攻撃が空振りし…チコラブが消える!
「…え?」「チ、チコラブさん…?」その場の全員がチコラブを探す。
「にょほほーん。あの程度のちゃちなカウンター程度で俺を葬るつもりだったのかしらーん?」
妙な声を出しながらチコラブが現れる。いや、現れると言うより…霧が集まり、チコラブになる。
「ま、これでチャージは完了。…葬ってあ・げ・る(はあと
 STS・ダブルエクステンド『魔砲「ファイナルマスタースパーク」+エターナルブレス+チャージバスター』」
壮絶な光帯が『偽りの魔王』を飲み込む。

『偽りの魔王』を飲み込んだ光帯が消える。
其処には、融けた床、天井、壁があるのみだった。
「…やった、のか?」「うん。やったやった。…でも、やりすぎたなぁ」
『確かにこれは…やり過ぎを通り越しているぞ…』光帯によって造られた穴を見つめて苦笑い。
「…さて。何でレーニャがここに居るのん?」『今更か』
「ま、ちょちょいっと…な。どうしても付いて来たい、といっていたしな。
 で、チコラブさん。…やろうとしてたって言ってたけど、マジ?」「マジ」
暢気に答えるチコラブ。しかし…『ほぉ…』「へぇ…」「そうなんだぁ…」
「…え?ちょ、レーニャ、ぱふぇ、リフィール…その…構えは…?」
『いやなに…ちょっと私も貴様を躾ておかんとな、と思ってなぁ…』
ニコニコと怒気をはらんだ声で優しく言うレーニャ。
「うふふ、先生…よくも騙してくれましたねぇ?」
「チコラブさん…流石にリフィールでも、怒ったよ?」それに続くぱふぇとリフィール。
「…ちょ、真澄、アンク君、ダリア、ナイラさん…!!」
「んー…とりあえず果てる前に聞くが、お前は本当に『魔王』なんだな?」「まぁね。認めてるし」
「そうか。…達者でな、チコラブさん。骨は拾ってやる」「酷っ!!」
けらけらと笑って冗談を飛ばす真澄。
「…ぱふぇたちのいうことも一理あります。面白そうですので…参加させていただきましょうか」
「僕は…まぁ…色々助けられてるし…でも助けられそうに無いですし…」「左に同じー…」
ナイラは指を鳴らし、アンクとダリアは戦線離脱。
「ジェイド、ニフ、ディアマンテ…は気絶してんだっけ。助けてっ!」
「お断りいたします。…そもそも、因果応報と言う奴ですよ、チコラブ様」
「私、怒る。けど、チコラブ様、危害、加える、しない。だから、見てる」
しみじみと腕を組んで呟くジェイド。ニフリートは怒りが目に見える。
「…ヒュドール」「…僕はもう覚悟が終わったんで…チコラブ様観念しましょう…」
るるるーと涙を流しながら呟くヒュドール。
「…懺悔は終わりましたか?先生」「天国への荷物の準備は?」
『トイレは済ませたか?』「部屋の隅でがたがた震える準備は?」
「あの…4人とも…何処かで聞いたことの有るような無いような台詞が飛んで来たんですが…気のせいでしょうか…?」
「さあ」「判決の時間よ!」『判決は…』「死刑ですね、漏れなく」
「『雪月花』!!」「『炎帝覇王断』!!」『メマーナイト!!』「『水龍神掌』!!」

…平和って良い物ですねぇ。いや全く。