あるRTWPC達 第14話 やばいやばいよばれては困る

──白い衣に包まれた少女
彼の者には狼の如き耳がある
彼の者には竜の如き尾がある
そして彼の者には真紅の首輪がある
しかし彼女は気高き獣
彼女の逆鱗に触れること無かれ──

『…というような詩だが、どうだ?』瓦礫の街で、おなじみの二人組みが喋っている。
「じゃあ、まず僕の耳は犬耳。それと尻尾はワニ。気高いかどうかは分からない」
『むぅ…』「それに『彼の者』か『彼女』かどちらかに統一したほうがいいんじゃない?」『ぬぬ…』
…チコラブとレーニャである。レーニャが詩を作ったので聞いて欲しい、といってこのような展開になっているわけだ。

「…そういえば最近レベル上げやってねぇなぁ」『あ…そうか、最近私につきっきりだものな。』
「まぁ、俺がもともとサボってた節も在るからな…。さて、どうすっぺか…」
『枝を使えばいいのではないか?』「…でもそれだとレーニャ狙われはせんか?」
『私は一応プログラムに憑依している…と言ったのはお前だろう?ならば私は狙われないだろう』
「あいよ」そして枝を折るチコラブ。
レーニャの目の前に冥魔が現れる。「…フフフ、何で僕一人なのにボス引き当てちゃうんだろ」
『まあ頑張れ、チコラブ』「支援してくれたら嬉しいけどね…マスターストライク!」
マスターリンクを投げつけ、其処から銃を連射する。

──「…とか何とか言いながら、出た敵出た敵全滅さしてる俺って一体…」
『お前が強い証拠だろう?レベル上げする必要も無いほどにな』
「流石に黒さんやリフィールちゃんみたいな火力が無いから強敵が実装されると困りものなんだよ」
『そうか?私の見たところ障害物さえあれば殆ど対処できるだろう?』
(…確かに前倒せなかった奴も倒せてるからなー…)と思いながら
「けど、それが無いところで戦うのが困りものなんだよ」と言い放ちチコラブは枝を折る。

青い空間に、人が居た。
黒月緋純、ジノ、…そしてGMだ。
「プニャ〜〜(^ω^)」ネコポリンを抱いてほっぺたすりすりしているジノ。
しかし…、次の瞬間、ネコポリンが消え去った。
「プ、プニャぁ!?」ジノの顔にショックが浮かぶ。
「枝、ですね。こちらで使用場所をサーチしましょう」呑気なGM。
「そんな事も出来るのか?」黒月が尋ねる。
「最近出来るようになりまして…おや?」「どうした?」
「…使用場所、特定不能…」

「…プニャくん、かぃ…」ネコポリンは、瓦礫の町に居るチコラブの頭の上に召喚された。
『…何者だ、そいつは?』「前にいっぺん出して見たネコポリン。この子はジノちゃんが愛でてる奴だわ」
『…で、どうするのだ?』「…参ったな、こりゃ」チコラブはそう言って頭を掻きながら考える。
「…あ、そうだ。ディメンジョンウィップを利用できないかな…」『でぃめ…?』
「あー、簡単に言えば亜空間経由で別の場所に鞭で攻撃する技ね」『ほぅ…』
「とりあえず、出来るかやってみないと…ね!」そう言いながらミニオンストライクを放つ。

「困りましたね…」「あの機能、まだちゃんとなってないんじゃないか?」
「それはありませんよ」「そうか…?」慌てているジノを尻目に冷静に話し合う二人。
「…『禁断の聖域』は?」「いえ、其処には今誰も居ません」「だとしたら…何処だ?」
不意に、ジノが吹っ飛ぶ。「ジノ!?」ジノにぶつかったらしき、ポリンが宙を舞っていた。
「ミニオンストライクですね…」「…誰か居るのか!?」

「やば…誰かに当たった感触が…」『待て、的には当たってないぞ』
「なんかこのフィールド突き抜けちまったみたいだわ」『…器用だな、チコラブ』

「…ミニオン発射地域、特定不能…またですか。」「本当に壊れてないか?」
「ですから、それはありません。何度もテストして、やっと実用できたのですから」
ジノがむっくりと起き上がる。「黒月さぁん…(TдT)」
「…そうだ、技の記録で何処にいるか調べられないか?」「やってみましょうか」

「…多分、感触からして女の子だと思う。それもPC」『何故解る・・・?』
「歴戦の勘という奴だよ。今までいろんな相手にミニオン撃ち込んできたからね」
『そういうものか…?』レーニャがネコポリンを抱きかかえながら言う。

「…とりあえず、正規フィールドにはいないようですね」「そうか」「プニャ〜〜(;д;)」
「ですが、弱りましたね。幾つもある管理フィールドの何処にもいないとなると…」
「また想定外のフィールド、というわけか」「はい」

『…なんだ、この会話ログ』「んあ?どうしたよレーニャ」
『これを見てみろ』「…ジノちゃんと黒さんとGM…って…こいつぁやばいぞ…」
『一体どうしたと言うのだ?』「参ったな、此処が見つかるのも時間の問題だ…」
『と言うと?』「お前さんに危害が及ぶ。無論、俺はバグを隠しているから見つかれば俺も処分されちまうな」
『…まずいな』「それにさっきのミニオン、ジノちゃんに当たった…え?ジノちゃんに当たった?」
『は?』「レーニャ、プニャ貸してくれ。さっきと目標を同じにすれば送還できる」
相槌を打ち、チコラブにネコポリンを渡す。そして、チコラブが投げ、…ネコポリンは消えた。

「其処に誰か居るか解らないか?…いや、解らないよな」「ええ、観測対象外ですから」
「…とするとぉっ!!」黒月は飛んできたものを受け止める。それは…ネコポリンだった。
「プニャぁ!!(;∀;)」「ぷにゃ〜」猫ポリンを抱きしめるジノ。
それとは裏腹に「…おい、今の何処から飛んできたんだよ;」
「…先刻のものといい、フィールドを突き抜けてますね、一体誰が…?」
「…ミニオンストライク、だよなぁ…」「ええ…」「「…」」

「やばい、俺めっちゃ疑われてる…」次々と生成される会話ログを見て焦るチコラブ。
『まぁ、何だ。…頑張れ』「俺がガンバラにゃ誰がお前を守るのよ。全く…」
『では、私はどう言えばいい?』あきれた顔で言うレーニャ。
「何も言わないでくれるのが一番いいんだが…まあいい。とにかく、逃げ道を探しなさい。
 俺も出来るだけ喋らないようにするが、何処まで隠しとおせるか…問題だな。
 …レーニャ、スマンな。恨みたいんだったら、恨んでも構わない」
その言葉に対し『馬鹿者、お前は私の唯一の友人なんだ。恨むはずが無かろう』
「…それ抜きにして恨んでもいいっつー事だがな。兎に角、嫌な予感がしたら逃げろ」
『分かった。チコラブも、気をつけろよ』「ああ」そう言うと、チコラブはカオスゲートへと駆け出す。


──山岳都市フェイヨン北フィールドに、人影が4つ。
「…カズ、何か今嫌な予感がしたんだが」鎧の青年が言う。
「んな事俺に言われてもよぉ…でも、俺もだ。アシュやセリンは?」
「同感だ」「…」怪訝な顔で言葉を放つ男と黙って頷く少女。

──王国主都プロンテラにも、2人の人影。
「!?」「…アンク君、感じたかい?」「…はい。何か、嫌な事が起こりそうな…」
槍を携えた少年と、中国風の服を着た男性であった。

──衛星都市イズルードでは、…只今戦闘中
「…な!?」「ちょ、イデモン…だっけ?ぼさっとしてるとヤラれるよ!」
「…ああ、すまないね、リフィールちゃん」仮面の人影は斧を振るう少女に言葉を投げかける。
「だが…」「うん、何か、嫌な予感がする…!」


───それは、始まりに過ぎなかった。いや、この時には既に始まっていたのかもしれない。─── ───だが、これだけは言える。いつか、必ず彼等をも巻き込む戦いが起きる事を…───