あるRTWPC達 第15話 嵐の前のBOT狩り

「…ああもう、BOTうざいよー…」そう言いながら獲物を探す黒い首輪をつけた少女。
「あ、ムジナ。…邪魔しないでよー…」といいつつ攻撃を仕掛けた。
…BOTがやってきた。「もう、何で…」銃声。
心臓と思われる辺りを貫いた弾丸は、ムジナに当たる。勢いが消えているのか、ムジナの体力は残っている。
「どうぞ、早くとどめを」「え…あ、はい」少女は、ムジナにとどめを加えた。

「ありがとうございます」黒い首輪の少女は、犬耳・赤い首輪・ワニの尻尾の少女に礼を言う。
「いえいえ、BOT狩りは日課みたいなもんですから」犬耳の少女が答える。
「…あの、どこかでお会いしませんでした?」どこかで見たことがあるような気がする少女に尋ねる
「僕は君に合ったことは無いけど…そうだね、誰かのプレイ日記じゃないかな」
「ねえ、まさか…『フェイヨンの三奇人』のチコラブさん!?『ポリン遣い』の…」
「…大体三分の二ぐらいは当たり確定。残りの三分の一は、僕個人としては聞いた事無いや」
「あの、SS撮ってもいいですか?」「どうぞ、ご自由に」笑顔で返すチコラブ。

「今日こそ年貢の納め…」「はい、消えろ雑魚」紅いマントの男が出現早々ご退場。
「…今のは?」「気にしなくていいよ、只のMobだから」チコラブは明るい笑顔で返す。
「…人に見えましたが」「そういうMobも居るんだって」また明るい笑顔で返す。
「…喋ってたような気が」「空耳、空耳♪」といいつつ、チコラブはBOTに遠距離銃撃を放つ。

「お、猫耳だ」「あぅぅ、いいなぁ、チコラブさん…」猫耳を拾うチコラブに羨望の視線を投げかける首輪少女。
「あげる。僕がこれつけたらビジュアル的におかしいしw」笑顔でチコラブは猫耳ヘアバンドを首輪少女に渡す。
「え…いいんですか!?」「うん。さっきもいったように必要ないし」「有難うございます!」
「さて、それで君…名前聞いてないね(汗」「あ…すみません、ろくに名乗らないで…ダリア、といいます」
「…ダリア?」「はい♪」聞き返すチコラブに笑顔で答えるダリア。
(…オイ、待て。ちょっとおかしくないか?ナイラといいダリアといい…レーニャは俺がつけたから別だが
 何で俺の『白の書』のスタメンデビルのニックネームが都合よく俺の近くに来る!?)
「チコラブさん?どうかしました?」「あ、いえ。なんでもないです。それで、此処でまだ狩り続ける?」
「あ、はい。猫耳もウサミミも欲しいんです」「うん、じゃあ頑張っていこうね、ダリア」

「そういえば、チコラブさんは何を狩りに来たんですか?」ダリアが尋ねる。
「…まあ、なんてーか…一嵐来る前にBOT狩りまくろう、ということで」返答に困るチコラブ。
「…なんですか?一嵐って。手伝っていただいたお礼です、何か手伝える事があればおっしゃってください!」
「いや、…応援してくれるだけでいいよ。最悪、垢BANものだし」
「…へ?垢BAN…って、何を…?」「…ま、いろいろあるんだよ」溜息をつく。
「…でも、恩義は返しなさいと教わったので、一緒にやらせてください!」ものすごい気迫だ。
「…あのね、応援してくれるだけでいいと…」「手伝わせてください!」溜息をつく暇無く返された。
「…言ったでしょ?最悪垢BANされるって!」「それでも、です!恩義は返します!!」
「…わかった。確かに、今は人手が欲しいからね。…嫌だったら通報すればいい」
根負けしている。本来、関係ないPCは巻き込むまい、と決めたチコラブは溜息をつく。

「…わかりました」「…?」「一緒にそのレーニャさんをお守りします!」
「…じゃあ、最終確認。…本当に垢BANされてもいいんだね?」「はい!」
真っ直ぐに輝くダリアの瞳。チコラブは(リアルでも頑固者なんだろうな…ま、俺もだけど)と思っている。
「…やっと見つけた」不意に後ろから声がかかる。チコラブが振り向くと…「黒さん?どうかしました?」
『異端の探求者』黒月緋純が其処に立っていた。「…管理フィールドに居た俺たちを狙ったよな?」
「チコラブさん…この人は?」「『異端の探求者』黒月緋純。…一応友人、のはずだよね?」
「…多分な。で、ミニオンの件は?」「…知りません」「嘘付け」チコラブの答えに黒月が即答。
「…なんで?」「やりそうな心当たりはあんた一人だけだから」「…(汗」
「…一体何のことなんですか?」「いやね、なんか黒さんがミニオン当てられそうになったらしくて」
「…俺は当たりそうになったとは言っとらんが」「…ああ!しまった…やられた…」「…自分から引っかかったんでしょう?」
…まるで漫才だ。「…わかりました、白状します、俺です。プニャを送還する為に狙いました」
「…発射地域が特定不能だったんだが」「そのことに関して、お耳に入れたいことが」気分は悪代官に仕える商人(ォィ
「…と、ストップ。話について行けませんが」「普通の人ならそれでヨロシ」商人からエセ中国人に(ォィォィ
「まあとりあえず…GMに楯突かなきゃならないんですよ」「…面白そうだ」「言うと思ったよ、変人戦闘ky──」
黒月は無言のプレッシャーをかける。「…ま、おいといて。では、説明させていただきましょうか」

「…そうか、恋人を守るt──」先刻やられたように無言のプレッシャー。「その娘に愛着が湧いた、と」
「ま、そんなもんですね」「いいだろう、協力する。…似たようなのを面倒見ているしな」
「それで、そのレーニャさんに会わせてもらえませんか?」「そうだな、守るのが誰だか確かめておきたい」
「…OK。付いてきてよ」と、歩き出そうとした瞬間「やあヒスミ」「黙れBOT」「相変わらずだね二人共…」
黒衣の男?が現れ黒月が短刀をその男?に刺しチコラブが苦笑い。
「…丁度いい、イデモ…」「ストップ、黒さん。…この人に話すといやな予感が」「何の話だい?」
間の無い会話にたじろぐダリア。無論話には付いて行けない。
「イデモンさんが入ると絶対嫌な方向にいく」「教えてくれてもいいんじゃ無いのかい?チコラブくん」
「イデモンさんは義よりも法って感じだからこの話は無理」「…俺、信用無いのかね。」
「全然信用できません」「…チコラブくん、意外と酷いな」「…」話に入れない。
「まあ兎に角…」チコラブはジョブをハンターに付け替え…「『スキッドトラップ』×99」
「おぉ〜〜〜〜のぉぉ〜〜〜」イデモンと呼ばれた男?は遠くへと。「さ、今のうちに」

「レーニャ、仲間を連れてきたよ」『…ああ、メリークリスマス』
「クリスマスは終わったぞ…って、寝ぼけてるな小娘(汗」
其処にいたのは…本家ラグナロクオンラインのボスモンスター『月夜花』だった。
「二人とも、この子がレーニャ。レーニャ、この二人は僕の仲間…ダリア、君は僕等の仲間になってくれるんだよね?」
眠い目を擦るレーニャに二人を紹介する。
「はい、手伝わせて頂きます。そしてレーニャさん、よろしくお願いします」ダリアは礼儀正しく頭を下げる。
「で、こっちの仮面の人が黒月緋純」『ああ、あの三馬鹿だか何だかの…迷惑をかける』
「三馬鹿じゃなくて三奇人」「こちらこそ、な…」黒月は先の台詞のおかげで頭を下げにくい。
「…で、招かれざるお客様、か。『ミニオンストライク』!」チコラブがポリンを投げる。その先には──
「…いきなり酷いなあ、何をするんだい?チコラブくん」…イデモンだ。チコラブと黒月が睨む。
「大丈夫。これを報告する事はしないよ…少なくとも俺は、ね」
イデモンが横目で見るように促す。四人が見た先には──
「…チコラブ、さん…まさかあんた、バグを隠していたなんて…」軽装の少年…カズだった。
「…カズ君、こっちについてくれない?」「…なんでだ」
不安な顔をするチコラブに対し信じられないという顔でカズは返す。
「何であんなにバグを見つけて報告していたあんたがそんな事をッ…!
 俺は、それを目標にしてRTWを始めたのに…!!」そう言ったとたん、チコラブの顔が
「…黙ってるほうがいい真実だって有るんだ」豹変した。冷静に敵を見つめる目に。
「君がこれを報告するんだったら、悪いけど…逃がすつもりは毛頭ない!」
『早撃ち』で逃げる隙を与えずに先制攻撃を放つ。同時に残った三人が突撃するが…
「『蝶の羽』!!」…逃げられた。「…くそっ、もう2秒ほど遅かったら逃がさなかったんだが…」
黒月が地面を叩く。間を置かず『…やはり、報告されたぞ』レーニャが会話ログを持ってくる。
『どうやらチコラブ、ダリア、黒月、それにイデモンとやらは各施設の使用が禁止されたようだ』
「…くそっ、物資が足りない…」「でも無いぞ?」頭を掻くチコラブに、黒月は思いがけない一言を放つ。
「知り合いにたのめば何とかなるだろう。青Pなり白Pなり、な」「…わかった、アイテムは黒さんに任せるよ」
「…でも、私たちはどうすれば…」「ダリアとイデモンさんは暫く休んでいて。僕は…仲間を当たってみる」

「…本当か!?あの三人がそんな事を…!?」「ああ、今しがた見た。この目ではっきりと…」
森の中にたたずむ二人の人影。片方はカズだ。
「GM、どうするんだ?」「知れた事を…排除してそのバグを削除する」
GM…RTWの管理者の一人が、もう一人の人影だ。
「準備に二日ほどかかる、それまでお前はレベルを上げていてくれ」「ああ、わかった」
暫くすると、RTW全エリアに声が響き渡った。

「…OK、ナイラさんやアンク君たちは連絡がついて…セリンさんもOKみたいだ…リフィールも…」
チコラブはメールを待っていた。その横で、レーニャが会話ログを漁っている。
『GMとやら、本気だ…。管理者告知で全マップに伝えている…!』
「急ぐ必要があるな…獣耳同盟の皆は…頼んだら一体どれだけ高い借りができることやら…
 後は…あ、アシュさんが来てくれる、…ああ、そうだ。ダリア、イデモンさん、ちょっと表に出て僕たちの味方を招き入れてくれない?」
「え、でも…」「大丈夫、『カボチャ畑の一軒家』に集まるよう言っておいたから。あそこなら人は殆どいないしね」
「…わかりました。行ってきます」「それじゃあ、そっちは頑張ってね、チコラブくん」「うん、そっちのほうはたのんだよ〜」
そういわれるとダリアとイデモンはカオスゲートに向かう。
「あー、ちょっといいか?アイテム関係は一日あれば大量に用意できるってさ」ダリアと入れ替わりに黒月が話し掛けてきた。
『なら大丈夫だな、攻撃は明後日だそうだし』会話ログを手に報告するレーニャ。

「…ククク、面白クナッテキタナ…」 ──夜の闇に紛れて、…悪魔の声がしたような気がした。